
二十四節気の「雨水」でもあった2月18日。
文字通り、お天気はあいにくの雨だったのですが、
雨水は農耕の準備を始めるのによい日とされて
います。そんなぴったりのタイミングの日に、
当会で試験的に木村式自然栽培で桃づくりに
取り組んでくださっている「なんば桃園」さんで、
木の剪定をするというので、おじゃまして来ました。
12月におじゃましたときには草ボーボーでしたが、
数日前に刈ったそうです。
これから芽(と根)が動き出すのに備えて、地温を
上げようという意図があるとのことでした。
難波さんは「まだまだ木村さんに教えてもらいながら
少しずつ覚えているだけなので、違っているところも
あるかも知れませんが、これから剪定してみますね」
と謙虚におっしゃって、ハサミを手にされました。
木村さんは日頃から果樹の剪定の際
「葉っぱに設計図が書いてある」と
おっしゃっています。
樹枝は、葉脈のように伸びたがって
いるのだそうです。
皆さん、桃の葉ってどんなだかご存知
でしょうか?右のような細長い葉っぱ
なんですよ。ちなみに桃の葉は昔から
汗疹に効果が期待されるといわれ、
「桃の葉ローション」なんてものも
ありましたね。
で、この葉っぱをひっくり返してみると、
中央にまっすく伸びる主脈と、主脈から
横へ側脈が伸びています。
水や養分を運ぶ維管束が幹や茎に通って
いるのと同じように、この葉脈の内部にも
維管束が走っています。



木村さんは、樹姿全体も、1本1本の枝も、この葉脈と同じになるように剪定をすればよい、
と各地で指導されています。

これまでの果樹は、効率的に実を収穫することを
優先してきたため、木の中心になる主幹(葉脈で
いう主脈の部分)を途中で切り留め、横へ横へと
枝を伸ばすように樹姿が作られてきました。
これが常識化されてきたため、もし山で伸びたい放題に
自由に生長した本来の桃の姿があったとしても、
それがどんな姿なのかを見たことのある人は、あまり
いないのではないでしょうか。でもその答えは葉っぱ
に描かれていたんですね!
難波さんは、木村さんに教えていただきながら、
桃の樹姿を元の姿へ戻そうとしている最中なのです。
その剪定の仕方は、これまでの「切ってはならない枝」
「切るべき枝」がまるで正反対なので、最初はかなり
抵抗があるようです。
「この枝はたくさん結実する花芽がついてるのになぁ…」
と惜しい気持ちになる枝でも、必要なら切るからです。
木村さんは「たくさん実を採ろうとするのは人間のエゴ。木が気持ちよく枝葉を伸ばせるよう、
木の気持ちになってみてください」といつもおっしゃっています。
また、「木を見れば、欲張りな人かそうでないか、一目瞭然ですよ」とも(笑)
難波さんは「僕はまだまだ躊躇するときがあるから、修行が足りないんですよ…」と笑って
いらっしゃいました。(本当に謙虚な方ですよね。断然自然栽培に向いているタイプ!)
こちらの木は、すべての枝を落とした後に、新梢が出てきたところ。
以前の枝葉がなくなったことで、養分が集中的に新梢に集まり、
樹勢がよくなります。木を若返らせる方法として、ガーデニングの
世界でも「コピシング」と呼ばれ、里山などでも「萌芽更新」と
いって、雑木林の再生に利用されている手法です。
大きくなり過ぎた街路樹でも、この手法が使われています。
ここでは、中心に真っ直ぐ伸びてきた新梢を、この木の主幹にして、
これから伸びていってもらおうとしています。
ただし、これはかなりダメージ覚悟の大掛かりな外科手術のような
ものでもあります。木の状態を見誤ったり、剪定時期を間違えたり
すると枯れてしまいますので、ご注意を。


最後に、難波さんのハサミとノコギリを見せて頂きました。
切っている最中、
「サクッ、サクッ」と切れ味のよい音がしていたんです。
この剪定道具、なんと木村さんからのプレゼントだそうです!
木村さんは初めて指導された時、「ハサミ、見せて」と
難波さんのハサミをご覧になり、
「よく切れるいい道具で切ってあげないと、木が痛がるよ」と
木村さんは、わざわざご自分が使っているのと同じハサミと
ノコギリを取り寄せて、送ってくださったのだそうです。
木村さんがそこまでされることは、そうそうないとのこと。
木村さんから難波さんへの、何よりのエールですよね。
木村さんは、本当に木の気持ちを考えてあげているんですね。
木村式自然栽培で育つ植物(作物)たちは、本当に幸せです♪
その幸せを、私たちもお裾分けしてもらっているんですね^^
生産者ページ>「奇跡の桃」に挑む人のページもUPしました。
合わせてご覧ください。