「自然栽培を科学する」レポート(2)

最初の木村秋則さんのご講演では、以下のようなお話がありました。

 

・日本は世界で一番農薬使用量が多い。

・肥料をやらなくても、十分作物は育つ。これは北海道の大規模農場でも実現できており、

 採算性のある農法になりうることが立証されている。

・自然栽培の圃場では、多種多様な生物が、生態系の中でバランスよく互いにけん制し合って

 おり、返って病害虫の偏った異常発生が抑えられている。

・何も考えずに肥料をやり続けることで、地力を弱め、回りまわって環境汚染や温暖化

 といった環境問題にまで影響を与えてしまっている。

 

このほかにも、トマトやジャガイモの作り方のちょっとしたコツなども紹介されました。ジャガイモの種イモは、半分に切った切り口を上向きにするだけで、土寄せをしなくてもよいとのこと。皆さんの目からウロコが落ちたのを、見逃しませんでしたよ!(笑)

※じゃがいもは、日光に当たると緑色になり、ソラニンという有害物質を出すため、

 土をかぶせて(=これを土寄せといいます)日光に当たらないようにする必要があります。

***

最近、ゲリラ豪雨のために各地で甚大な被害が起きているニュースが立て続けに報道されています。本来、空から落ちた雨のしずくは、まず、木や木の足元にある小さな植物たちが受け止め、葉や枝をつたってポトポトと滴り落ちます。

次に、地面に積もる落ち葉の層が雨水を受け止めます。そして静かにやさしく、じわじわと下の土へと染み込んでいきます。

地面に染み込んだ雨水は、土の中をゆっくりと流れ、土の隙間を流れていくあいだに不純物がろ過され、さらに小さな不純物は、粘土や有機物に吸収され、だんだんと澄んだ水へと浄化されていきます。
一方、吸収された不純物は、微生物によって分解され、やがてこれ以上小さくならない状態となって気体になり蒸発し、空へと戻っていきます。

このプロセスは、木や植物、そして土、土の下にいる小さな生き物たちのおかげで自然の摂理の中で、かなりの時間をかけてゆったりと循環しています。

この水の循環が、スピードも、量も偏り始め、極端になってきたのは、一体いつの頃からでしょうか。思い当たることがありませんか?除草剤を撒いて、草の根も葉も、昆虫も微生物も一網打尽にし、生き物のいなくなった砂漠のような土地。一見、清浄にされたと思われたその砂漠に、肥料を撒いて育てられる作物。

 

もっと甘いものが食べたい。皮がかたいのは食べにくい。綺麗で大きいものがいい。リクエストに応えた作物は売れる。応えられなかったものは捨てられる。自分たちが美味しいものを食べたいばかりに、自分たちの収益のために、自分たちの狭い目的だけにフォーカスし、全体を見ず、バランスを壊したのは………

 

いえ、犯人探しをするよりも、これからすべきことを考えたい。それが、自然栽培の普及だと私たちは考えています。レポートの続きとして、この後ご紹介していく予定ですが、現在、日本各地で自然栽培をベースに活動を始めている団体が急速に増えています。その勢いの凄さに、地方自治体が動き始めているところも出てきました。さらには、医学界も注目し始めています。

 

木村さんは、この全国の自然栽培の動きは、あの明治維新を彷彿とさせる、非常に重要な動きだと感じているそうです。「これは農業ルネッサンスです!」と力強くお話されていました。

 

次回は杉山教授の講演レポートです。

またまたつづく