日中はまだ暑さがあるものの、朝晩は気持ちのよい爽風が吹き、秋らしくなってきました。
寒暖の差も出てまいりましたので、季節の変わり目、着るものにも気をつけたい時期ですね。
田んぼの稲たちも、そんな季節のわずかな変化にもバッチリ対応しているようです。

ヒガンバナが咲き誇っている、とある生産者さんの圃場。
ヒガンバナはご存知のとおり、アルカロイドという有毒物質を持っており、誤食すると死に至る場合もあります。これを利用して、昔から田んぼの畦などに植え、モグラやイノシシなどの獣害避けとされてきました。昨今では有効性は見られないともいわれていますが、そもそも動物たちのエサとなるミミズが嫌って土に生息しないこともあり、結果的に獣害対策になっている場合があるようです。
ヒガンバナも除草剤のために失われている地域が増え、こうした光景が見られなくなっていますね…。

こちらは、昨年までは雑草に悩まされていた田んぼ。取り組み3年目です。元々、慣行栽培の頃から草が生えやすく、除草剤の効きが悪かったという性格の圃場だそうです。今年はこれまでの失敗から逆算して、いろいろと工夫してみたとのこと。その結果、ご覧ください!草がほとんどありません!

JAさん「わぁ!Mさん、ようがんばったなぁ!全然草がなくなったなぁ!」
Mさん 「ハイ、そりゃもう、がんばりましたもーん♪」
とっても嬉しそうなMさん。この笑顔♪ そう、この田んぼはこちらの女性が手がけた田んぼなんです!育苗からすべて、トラクターや田植え機、コンバインなど機械も乗りこなすんです。すごいでしょう?耕起、代掻きのときに工夫を入れてみたところ、好結果につながったとのこと。
よかったなぁ、ホントによかったですねぇ~ ともう、みんなニコニコ顔でした。
「私一人でもちゃんと出来ましたから、自然栽培は怖くないですよ」と、春の生産者説明会でお話されていた姿が今でも印象に残っているMさん。「こんなに草が大変なのなら、もう辞める!」と言わずに続けてくださったことに、心から感謝です。今から収穫が楽しみですね^^

わ、この装置。なんだかすごい。なんでしょう?

めちゃくちゃ新鮮なお水が、田んぼに供給されています。自然栽培田にうってつけではありませんか!
これ、「パイプライン」というもので、国のかんがい排水事業の一環として、県内随一の穀倉地帯といわれる岡山市藤田地区に広く敷設されたものなんです。構想から着工までに30年という長い年月がかかり、ようやくお目見えしたシステム。そのお目見えした頃と合わせるように、自然栽培を始めたTさん。偶然とはいえ、すごいタイミングですね。田んぼが呼んだのかな?^^

もちろん、稲は順調です。生き生きとしています。
Tさんの奥様が「いつも2階の部屋から眺めてるんですよ。もう気持ちがいいのなんのって!」
そう言われて田んぼに佇んでみると、サワサワと気持ちのよい風が吹いてきて稲穂がそよいできました。まるで「いらっしゃい。よく来てくれましたね」って稲穂が歓迎してくれたような錯覚が。思わず、稲穂を「こんにちは~」ってナデナデしてしまいました^^

「男の人はね、データや根拠がないと納得しないけど、女性は感覚で受け止めるから、植物への感度も高いんよ~!これからは女性が地球をよくするんよ!」とTさん奥さん。なるほど!
「私ね、木村さんがこれから地球や宇宙のために何をしようと思ってるか、わかってるの!私らぁ、がんばらんといけんのよ!」とバンッと背中を押されたニコ。いつもTさんに元気を分けてもらっています。しかも、Tさんは全然パワーが目減りしない方なんです。男性陣はクラクラしてましたw
***
圃場巡回中、車を走らせながら「うーん… こりゃやっぱり、来てしもうたなぁ。こりゃいかん」
と田んぼを見渡すJAさん。何か異変を察知している様子・・・
JAさん「ニコさん。ちょっとこれ。見てごらん」そう促されて、株元を見てみました。

ニコ 「これって・・・」
JAさん「秋ウンカ。トビイロウンカ。これが出だしたら危ない」
ニコ 「えっ・・・」
JAさん「しかも、木村式の田んぼにだけ、なぜか出ていない」
ニコ 「えっ・・・!」

トビイロウンカ…別名:秋ウンカと呼ばれる、収穫間際に見られ、農家の人から恐れられている虫です。梅雨前線に乗って中国大陸から飛んでくるウンカは、世代交代をしながら繁殖します。稲で生まれたものは羽が短く、飛ばずに株元で育ち、稲の汁を吸います。こうなると、上の写真のように田んぼの一部がミステリーサークルのように枯れ始め、一気に広がっていきます。これを「坪枯れ」といいます。こうなると収穫が絶望的となります。
今回の圃場巡回では、なぜか自然栽培の田んぼにはその予兆が見られませんでした。
坪枯れになっている田んぼに両脇挟まれている自然栽培田もありましたが、何ともありません。
(比較写真を撮ろうかと思ったのですが、被害に遭われている農家の方の気持ちを思うと、これ以上は軽々しくシャッターを押せませんでした… ご無事を祈ります!)

「おかしいなぁ。ホンマに木村式のだけ、出てないなぁ」
今年、当会の担当も兼任してくださっているJAさんは、当たり前ですが、慣行栽培や有機栽培も手がけていらっしゃるベテラン。このたびは、自然栽培田の巡回でしたが、慣行の田んぼのことも心配していらっしゃるのが伝わってきました。
これはまだ憶測の域を超えていませんが、今回、自然栽培田での被害が見られなかったことについて、JAさんと以下のような考察をしてみました。
・田植えの時期が遅めなので、中国大陸からウンカが飛来してくる梅雨の時期を避けられた
・疎植にしていることで風通しがよく、ウンカが産卵しにくかった
・天敵であるクモなどの益虫が多い
・茎や葉が固く、クチクラ層も厚いため、ウンカが汁を吸いにくい
・まだ登熟期のため、稲に水をよく吸わせている
→ 水分がある分、少ない茎だけで汁を充分吸えるため、ウンカが広がらないのでは
しかし、自然栽培の田んぼも、この後ウンカの被害がないとは限りません。油断禁物です。
自然の大いなる力には、人間は及びません。生き物たちが教えてくれるメッセージに、五感をしっかり働かせてみたいところですね。
圃場巡回の様子、もう少し皆さんのご参考になれば…と思いますので、この後また続きます。
(つづく)