成果報告会のご報告(1)

Blogの更新を楽しみにお待ちくださっていた皆様、お待たせいたしました!

おかげさまで、2月1日の「岡山県自然栽培 成果報告会」は無事、盛会に終えることができました。

今回は、予定数を上回るお申込みをいただき、ご入場の際スムーズなご案内が出来ない状況がございましたこと、まずあらためてお詫び申し上げます。

前日に、「インフルエンザになったので、キャンセル待ちの方へ譲ってあげてください」というご連絡をくださった方もいらして、配慮あるお心づかいに私たちスタッフもホッとする一コマがありました。ギリギリまでお入りいただけるよう調整しましたが、ご覧の通り会場は満席。「もしかすると入れるかも知れない」と直接お越しくださった方を制限しなくてはならない状態で、大変心苦しく思います。今後も皆さんにご参加いただける機会を増やしたいと思います。


さて、冒頭から「えーーーーっ!!!」と驚くサプライズゲストのご登場です。

来賓として、木幡岡山県副知事が駆けつけてくださいました!
「え!副知事がいらしてくださるんですか???」最初、私たちスタッフも驚きました。

木幡副知事はご挨拶が済んだらすぐに会場をあとにする、ということなく、プログラムの最後まで熱心にお聞きくださいました。この取り組みが地に足のついたものであることを、少しずつ自治体が認めてくださっている表れではないでしょうか。

木幡副知事、ご多用中のところご来場いただき、本当にありがとうございます!!

 

さて、前半のメインは皆さんに好評、生産者の体験発表です。

トップバッターは、昨夏話題になった、岡山県立興陽高等学校農業科の皆さん。

木村さんは、高校生の皆さんが自然栽培に挑戦してくれたことを大変喜んでくださっており、自ら回っている全国の講演でも、このことを紹介されているそうです。


学生さんらしく、ただお米を生産するだけでなく、そこから学ぶべき題材を見出し、実験し、検証し、記録に残していることが大変素晴らしいですね。

今回発表してくれた生徒さんは高校3年生でご卒業だそうですが、後輩の皆さんが引き継いでくださるとのこと。これも嬉しいことですね。農学の分野では今後、ミクロな視点で細分化されるだけでなく、もっと広いマクロな視点での研究材料をもって成果をあげる研究者の登場が期待されるのではないでしょうか。ぜひ、これまでの既成の学問のラインから飛び出して、新しい「農学」を創出してください!

 

 

画像が暗くてごめんなさい!
画像が暗くてごめんなさい!

最近は女性の活躍が目覚しいですが、当会も然り。「女性でも農業は出来る。自然栽培もまったく大丈夫!」ということで、発表をお願いしたのが増成さん。JAさんからも「増成さんは、ご主人やご両親に任せないで、自分で何でもやる感心な人なんです」と推薦していただきました。

増成さんは、育苗から収穫まで、全部ご自分でやります。トラクターから田植え機、コンバインまで、全部乗りこなします。元々草の生えやすい田んぼでの苦戦した3年間を振り返ってくださいました。思い切って、チェーン除草ではなく、2条用エンジン付除草機を入れてみたところ、効果があったとのこと。草を制してみてあらためてわかったことは、除草は稲の初期生育のために手助けをしてやるのが目的ということ。稲の根がしっかり活着しさえすれば、あとは少々草が生えていても稲には関係なく、むしろ共生関係が生まれていると感じたそうです。

 

お米の食味についても触れていました。子どもの頃から採れたての自家米で育った増成さん。自然栽培1年目のお米は、まぁまぁかな?程度で、期待するほど美味しいとは思えなかったそうです。2年目になって力強さが感じられるお米になった。3年目になってようやく、辛口の親戚からも絶賛され、味が乗ってきたと感じるようになったそうです。「食べた後に口に心地よい甘さがいつまでも残っている」と、田んぼに出ないご主人が仰ったとのこと^^

素敵なミセスが、じつはこんな最先端の農業をこなしてしまうなんて、農業ガールの憧れになること必至ですよね♪

 

 


次にお話いただいたのが、ベテラン農家の林さん。迷彩服に地下足袋!という粋ないでたちでのご登場です。べらんめぇ調の早口なしゃべり方とは裏腹に、農作業はとても丁寧でカチッとされています。「ポイントは水じゃな!」と、一番に気づいていただきたい点にすぐ気づかれたのは、さすがベテラン。木村さんや熊田さんが常々教えてくださっている「乾土効果」とは、まさに水の管理次第なのです。
高額なキャビン付のトラクターを購入されたにも関わらず、「木村式は何回も耕さんでいいということで、5月に1回乗りゃいいだけなんで、キャビンの必要も何もなくて、ムダでしたw」というコメントに会場が沸きました。

 

林さんは以前、別の栽培法の講習会にも参加したことがあるそうで、このときに登録料、更新料、…と様々な手続きや料金が重なることに違和感を覚えたそうです。「木村式は、最低限の資料代や実費だけしか徴収せず、良心的ですよ!」とお褒めいただきました♪ 木村式自然栽培は、ムダがなく合理的な栽培方法でもあるんです。今年は圃場を広げてくださるとのこと、とても心強い生産者さんがまた一人増えました♪

 

 


この方にも是非お話していただきたい、とオファーしたのが藤井さん。農業経験ゼロで、圃場探しからご苦労されました。そんなときにいつも彼を支えたのが、笠岡地域の方々のつながりです。当会の生産者さんが快く地主さんを紹介してくださったり、町おこしの活動をしている仲間の方々が農作業を手伝ったり、自然栽培の取り組みがきっかけとなり、笠岡の町おこしと笠岡諸島の島おこしの連携が深まっているそうです。とても嬉しいことですね。

 

「これはぜひお話して欲しい」とリクエストしたのが、生産者リーダーの山田が藤井さんに喝を入れたエピソード。藤井さんは、お田植え祭が終わった後の懇親会の席で、お米作りを「出来る限り頑張ります!」と発言されたことがあります。この言葉に反応したのが、山田。「出来る限りなんじゃったら、やめてしまえ!やり切る気持ちがないと、自然栽培は出来んぞ!」と、一喝したことがあります。
「出来る限り」という言葉の中に、自ら制限を設けてしまっていることを、山田は見抜いたのだと思います。藤井さんはそのことに気づかれ、「自分の迷いに一つ、何かがふっきれたと思う」と言われていました。山田の一喝に反発したり言い訳したりすることなく、それを受け入れた藤井さんは素晴らしいと思います。だからこそ、初めての収穫で一等米の評価を得たのではないでしょうか。

 

農業は、人の命を預かる非常に責任の重い仕事です。生半可な気持ちではいけない。山田は、そのことを一人でも多くの生産者の方に自覚して欲しいと思っています。

 

 


そんな山田からの発表。4年目を経過してあらためて山田が感じていることをお話いただきました。テーマは「5俵でも成り立つ質のよい米づくりをする決意」。

これまで自然栽培は、慣行栽培や有機栽培の7俵、8俵…という収量に比べて「収量が減る」といわれてきました。これについて、私たちは肥料・農薬を使っていなかった時代の収量に「元に戻っている」と表現してみてはどうだろうか?と考えています。少しでも多く採ろう、収量が多いことを競おうとしてきたこれまでの心の動きに対し、山田は「これは自然栽培の精神とは逆行しているのではないか」と感じ始めています。

また面白いことに、肥料の力に任せた窒素過多なお米は、収量はあっても「食味」は落ちる場合があります。「量よりも質」を追求し、その中身に対し、適正な評価(価格を含む)を得られることが必要だと提案していました。実に考えさせられる課題ではないでしょうか。

 

 


いつも検索キーワード上位にいるのが、「木村式自然栽培の桃」の難波さんです。

これまでの取り組みの経緯をお話くださいました。昨年は、岡山県の推奨品である「清水白桃」につづき、「おかやま夢白桃」の2品種を栽培くださいました。「おかやま夢白桃」は、病害虫に強い性質を持っているため、自然栽培で作りやすかったそうです。

桃の旬を過ぎた今でも「自然栽培の桃を買いたいのですが」とお問い合わせがある難波さんの桃。
今後、生産量の拡大を目指して、生産者数も増やしていく方向で、いろいろな課題の解決を急いでいます。「急いてはことを仕損じる」ということで、確実な取り組みにしていきたいと思いますので、皆様のご理解をよろしくお願いいたします。

 

 

前半の締めくくりは、木村興農社 主任研究員の熊田さんからの総括。

一人ずつの発表のポイントをわかりやすくまとめてくださり、皆さんの発表を「素晴らしかった」と評価してくださいました。今年度も引き続き岡山へお越しくださり、圃場巡回や指導をしていただく予定です。今年は、「熊田さんのお話を聞く会」のようなものも企画できるといいなぁと考えています。

 

成果報告会のご報告(2)へつづく)