圃場巡回レポート1

今年度も申請書の受理が完了し、晴れて当NPOの登録生産者になった農家の皆さんの木村式自然栽培米づくりが始まっています!

当会の活動の一番のキモとなるのが認証活動です。圃場巡回は、この認証活動の一環となります。

自然栽培は知れば知るほど奥が深く、農薬と肥料さえやらなければ即「自然栽培」なのかというと、本来は一朝一夕で簡単には完成しません。圃場の状態、生産者の意識、出来た収穫物の様子など、総合的に見る必要があります。

 

私たちは、木村さんの提唱する自然栽培としてふさわしいかどうかを検証するため、外部の各団体・企業と共に認証委員会を設置し、協議を行ったのちに認証する、というシステムを採っています。
このように複数の団体・企業が集まって、客観的な視点を持ったシステムを構築しているのは、国内ではおそらく当会だけで、全国各地から多くの団体が視察に訪れてくださる要因の一つとなっています。

当会作成の栽培手引きでは「代掻き直前までは耕起はしないでください※1」とアナウンスしています。

↑の写真は、左側が登録生産者さんの圃場、右側が慣行圃場。違いが歴然とわかりますね。木村さんが「草が土を作っている」と日頃おっしゃっているように、草の根っこの周りには、微生物をはじめ様々な分解者が集まって※2土の団粒構造を作っているので、それらを壊さないようにするのです。

 

しかし、通常農家のあいだでは、草を生やしたままにしておくことは「駄農」と呼ばれ、とても恥ずかしい行為とされています。田植え前にこまめに耕し、練りに練った田んぼは、ご近所でも評判のよい田んぼと見られます。ですので、農家の方にとってこの草を生やした状態にしておくこと自体が、とても勇気の要ることなんです。「お宅はもう米づくりは辞めたの?」と真顔で言われてしまうくらいなんです^^;

 

※1耕起後は、数日田んぼを寝かせてから代掻きに入ります。

※2土壌微生物は、栄養分の乏しい土にではなく、植物から供給される栄養分を求めて根に集まります。

  このように根に集まる微生物のことを「根圏微生物」といいます。

これは除草剤で枯れた草。除草剤を撒いたかどうかはこのように一目瞭然です。

自然栽培が認知されるためにも、私たちは批判や対立軸が作られることを善しとしていません。できるだけ迷惑がかからないよう、ほかの栽培法をしている圃場と隣り合っている場合には、きちんと高めの畦を作って草もこちらがこまめに刈り、「除草剤をこっちに撒かないで!」と声高に主張することはしないように、とお願いしています。

趣旨を理解し、肩身の狭い思いをしながら、何度も何度も畦の草刈りを続けてくださる生産者の皆さん。本当に頭が下がります。

 

田んぼは一旦水が入ってしまえば、水が干渉することで草の管理は畑(野菜作り)に比べてコントロールしやすく、イネ自体も強いのでほかの植物との共生も出来て比較的楽なのですが、畦の草管理はとても大変なんです。

 

また、畦に草がある程度あるおかげで、その草へ虫が集まり、バンカープランツの役目も果たしてくれています。自然界が田んぼにふさわしいバンカープランツを植生させているわけですから、やはりここでも人間は自然の摂理のじゃまをしないようにしないといけません。

 

こうしてコツコツと地道な取組みを重ねていくおかげで、土壌がどんどん植物群集や分解群集を変えていき、ご覧のようにレンゲが自生したり、カエルやメダカが戻ってきたりしています。

 

その様子を見た人が「昔はこんなふうにレンゲが咲いとった」「この光景、懐かしいなぁ!」「カエルや虫がたくさんいるので、子どもがここに来るのを喜んでるんです」と言って集まり始め、やがて自然栽培へ理解を示してくださるようになっています。「わしもいっちょ、来年はやってみようかな…」なんて農家の方も(^^)

 

少しずつ、少しずつ。声高に主張するのではなく、危機感をあおるのでもなく、自然栽培に宿る温かな感動をお伝えしたいと思っています。

今年はこんな素敵なものを発見!白いレンゲソウです。「幻の白蓮華」とも呼ばれるそうですね。

自然栽培を続けていると、本当にいろいろな自然界からの贈り物を見せてもらえます。「圃場を見て回るのって大変でしょう?」と言われるのですが、じつはとても楽しかったりします^^(あっ、ちゃんとマジメに確認作業はしておりますよ~☆)

 

つづく