圃場巡回レポート<田植え編>

遅くなりましたが、圃場巡回レポートの続きをご報告いたします。今回は田植えの時の様子を。

おじゃましたのは、JA岡山東管内です。JA岡山東さんへは現在、当会の活動にご賛同いただけるようお願いをしているところなのですが、当会へ参加してくださる生産者の皆さんの懸命な努力が、私たちの大きな力となっています。

私たちがおじゃましたのは6月30日。ちょうど田植えが終わったばかり。2度目のチェーン除草をしたところがほとんどでした。

黄色い電車が水面に映って素敵な光景
黄色い電車が水面に映って素敵な光景

以前にもお伝えした通り、チェーン除草は、「除草」という言葉こそ入っていますが、木村興農社の主任研究員 熊田さんからのアドバイスによると「発根促進」の意味合いが強いことが最近になってわかってきました。土の中をかき回すことで、根を刺激したり、酸素や窒素を供給しやすくしたりし、幼苗の根の活着を助けています。稲の根がほかの草よりも早く根を広げることができれば、草の繁茂を防ぐことができます。

このとき、よく「苗が抜ける」という方がいらっしゃいますが、苗が小さい内に植えてしまうという苗側の原因のほかにも、耕起や代掻きをした後、土と水がこなれていない内からすぐに苗を植えているという、圃場の段取りの不備による原因も見受けられます。農業経験者さんにとって話題に出ることもないほど当たり前のことでも、初めて米作りをする素人さんにはわからないことも多いようです。手引きに書かれてあることだけでなく、通常の米作りの指南書でも知識を増やして実践することをお勧めします。

手引きに書かれてあることを右から左へ額面通りにそのままするだけではなく、常に記載されていることの背景を考えることで、田植え期のトラブルを未然に防ぐことができるといえるでしょう。何度も何度も読み返してみてください。そして重要なのは、それらを実践し、その結果を手中に収めることが一番!考えてばかりでは頭でっかちになってしまい、前に進みません。

 

こちらは獣害対策のために、電柵を設置されていました。補助が出るとはいえ、自己負担も大きく、生産者さんのご苦労には頭が下がります。こちらの圃場、畦といいこの電柵といい、とても丁寧に圃場を整えてくださっています。生産者さんは、お話していても穏やかでニコニコとされていて、とても素敵なご夫婦なんですよ^^

こちらはイメージ画像をお借りしました※当会の認証田ではありません
こちらはイメージ画像をお借りしました※当会の認証田ではありません

ところで、水田には”小さなダム” の役割があります。
水は高い所から低い所へ流れる特性があるわけですが、流れ出す水が長い距離を進むにつれ、大きな運動エネルギーを持つようになります。これが山の斜面など遮るものがない場所では、コントロール不能なほどのエネルギーに増幅させます。この最たるものが土石流です。(このところ連日報道されている広島の土砂災害に遭われた方には、心よりお見舞い申し上げます)

 

水田があると、畦が水の落差を小さくし、水の流れる勢いを小さく留めることができます。また、土壌浸食を起こさないため、圃場に蓄積される養分や生態系が保持されます。アジアモンスーン地帯で降雨の多い日本において、土壌浸食のないこの水稲農業が古代より国内全域に広がり根付いたのも頷けますね。当会が野菜(=畑)よりも先にお米(=田)で自然栽培を学ぶことを奨励しているのも、このようなところにも理由があります。

さて、こちらは生産者Nさんの作られた苗。

なんてやさしい緑色をしているんでしょう!

 

肥料を施していない自然栽培の作物は、このように薄い緑色をしています。これはクチクラ層という保護膜に包まれているため。葉物野菜やお豆など、沸騰しているお湯にくぐらせると、彩りよい緑色に変わりますが、あれはクチクラ層がなくなって、本来の緑が出てくるんですね。クチクラ層は人間の毛の表面にもあるんだそうですよ。

 

いろいろな生産者さんの苗を拝見していると、苗の様子もそれぞれ違っているんです。やさしい苗、力強い苗、ちょっと自信なさそうな小さな苗や、やる気満々の苗等々…^^

 

作る人の性格が出るのか、はたまた、土地や作物が人の性格を作っているのか?

ニコは巡回を繰り返しているうちに、後者なのではないかと思えるようになってきました。

なぜかって?それは自然栽培を知れば知るほど、理由がわかってくるようになりますよ(^_-)-☆