
ヘッダー画像が変わりました。これは、収穫祭のときに引き抜いた朝日の稲株です。土を落とそうとしていたので、「あっ!土を落とさないで!」…思わず叫びました。端っこの方に生えていたもので分けつはそんなでもありませんが(もっと本格的な稲株は太っています)しっかり土を掴んでいます。

こちらは収穫祭が行われた当会のモデル圃場。土だけになっているのは、ジャンボタニシの食害があったからです。(後から植え直しはしませんでした )スカスカで隣り合う株がなかった稲は、先日の台風18号・19号の風をモロに受けても踏ん張り続け、このように倒伏しませんでした。(朝日は「倒伏しやすい」といって敬遠されてきた品種にも関わらず! )
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今回は、根っこのことを少しお話しましょう。

これは、土を落とした稲の根です。ものすごい量の根が塊のようになっているでしょう?

ちなみにこちらは、8月お盆の頃の稲の根っこ。まっすぐに伸びる白く太い根が分かるでしょうか。この根は、土中の窒素分を求めて深く深く伸びたもの。この根が伸びている時期を「栄養成長」といいます。ちょうど分けつしている時。この白く太い根のことを「主根(primary root )」といいます。

この主根が伸びている時期と土用干しの時期が重なってしまうため、根が切れてしまわないよう、自然栽培では「土用干し(中干し)はしません」と言っています。
通常の栽培では、苗が肥料を吸収してどんどん徒長してしまうので、土用干しすることによって根を分断させ、強制的に栄養成長をストップさせます。こうなると、苗は自身の持つ植物ホルモンの働きによって栄養成長から生殖成長へと切り替え、穂作りを始めます。根を切られた苗が「もうすぐ死んじゃうかも!」と思って、子孫を残そうとするのでしょうね。

主根がある程度出揃うと、次に脇から細い根が出てきます。栄養成長が完了し、生殖成長へ切り替わる頃です。この根を「側根(secondary root )」といいます。側根は分岐順によって、「第1次側根」「第2次側根」…と呼ばれます。上の画像は「第1次側根」です。
側根は菌根菌が共生する部分でもあります。菌根菌は、宿主である植物に土壌中のリン酸や窒素を供給する代わりに、植物が光合成によって生産した炭素化合物をエネルギーとして貰います。この共生関係を最大限に引き出そうというのが、自然栽培というわけなんです!
このように、自然栽培の農産物は肥料分が入っていないわけではなく、自然界の仕組みの中で作られた肥料分は入っているので、「無肥料」というよりも「無施肥(非施肥?)」という表現の方が語弊がないかも知れませんね。
また、こうした自然界の生命活動は、圃場の個性にも影響を与えます。農薬や施肥によって干渉されていない分、作物にも圃場の個性がダイレクトに反映されます。粒も味もバランスがよい、美味しいけれど粒が小さい、収量はたくさんあるけれど味は今ひとつ、正直いえばあまり美味しくない…等々、圃場の個性(とその圃場に携わる生産者の力量)によって、収穫されるお米は同じ朝日米といえど、本当に多種多様に違っています。
このため当会では、岡山パールライスさんの長年の経験と実績による精米技術で、味が均一になるようブレンドしてもらい、皆様にご提供しています。こうしてブレンドされたお米は、様々な個性が調和され、奥深いハーモニーとなっています。
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話を戻しましょう~♪(このテの話をすると、どんどん論点がズレていきますので^^;)

第3次、第4次あたりから、穂作りが始まります。この後、自然栽培の稲なら第6次くらいまで分岐します。通常は第4次くらいで終わってしまうのですが、自然栽培の主根は非常に太いので、稲刈りギリギリまで分岐が続きます。このように根の分岐が進むからこそ、土の上での事象=頭を垂れている稲穂を私たちは確認できるんですね。

自然栽培の稲が倒伏に強い理由、もうお分かりいただけたでしょうか。太くまっすぐな主根と、幾重にも伸び広がる側根たちが、これだけの量の土をわし掴みにし、ガッチリと大地に根付いているのです。自然栽培の田んぼで倒伏してしまった方は、今一度、土の中のことを考えてみてください。どこかでボタンを掛け違えているかも知れませんよ。
木村さんは「土の上のことばかり見てはいけません」と仰っています。
土の上に見えるものは結果に過ぎません。土の中にある過程に、ぜひ思いを馳せてみてください。
それにしても、植物って何て偉いのでしょう!自然界の仕組み、知れば知るほど楽しいですね!!