
夏至も過ぎ、ほとんどの圃場で田植えが完了した頃でしょうか。ホッとするのも束の間、いよいよ草と暑さとの闘いの火蓋が切って落とされました…!
生産者の皆さん、お疲れ出ませんように (-人-)
さて、毎年のように西日本を中心に発生しているジャンボタニシの食害。岡山県南でも、今年もジャンボタニシが登場しています。
ジャンボタニシはスクミリンゴガイとも呼ばれている外来生物。食用として国内に持ち込まれましたが、需要が伸びずに廃棄処分されたものが定着してしまいました。
通常は薬で駆除しますが、もちろん自然栽培ではご法度!対策の一部をご紹介します。
【まずジャンボタニシを知ろう!】
日本在来のタニシの一つに、ヒメタニシがいます。外来のジャンボタニシと、在来のヒメタニシで比較してみましょう。(本来はジャンボタニシはタニシ科には分類されていないのですが、同じ水田にいる巻貝として、双方を比較します。)
ジャンボタニシは・・・
1)えら呼吸と肺呼吸の双方ができる。(ヒメタニシはえら呼吸のみ)
2)ほふく運動と遊泳ができる。(ヒメタニシはほふく運動のみ)
3)水中と陸上で活動できる。(ヒメタニシは水中のみ)
4)ジャンボタニシは柔らかい有機質のものを好んで食べる傾向がある。
5)摂食方法はジャンボタニシは刈り取り食のみ。(ヒメタニシは刈り取り食・堆積物食・濾過食の3通り) ⇒ヒメタニシは1箇所にとどまっていても複数の食料確保が出来るわけですが、ジャンボタニシは刈取っては次へ次へと移動するため、高い活動性を備えたんですね。
【予防線を張れ!】
ジャンボタニシは耐寒性がないので、冬越しさせないよう、冬のあいだに用水路の水を切っておきましょう。水を引く時にも、水口に網などを仕掛けて、田んぼへの侵入を防ぎます。
田土の中で越冬するものもいるので、 耕起して掘り返し、寒さに充てる人もいるようです。(ただし、木村式では頻繁な耕起は奨励していないので、ご自身の圃場の性質や都合をよく考えてみてください)
また、ジャンボタニシの卵は水中では孵化できません。そこで、卵のうちに水の中へ落としてしまいます。
【ジャンボタニシが活動し始めたら…】
2)から考えられる工夫
●遊泳ができるので、深水にするとジャンボタニシが活動しやすくなります。かといって浅水にすると、ほかの草が光合成をして繁茂してしまう。…この矛盾をいかに上手にかわして水の管理をするか。このさじ加減が、生産者の腕の見せ所です!
●田んぼが凸凹になっていると、深いところでジャンボタニシが活動します。つまり、代掻きのときに丁寧にならしておかないといけないということですね。(当会の生産者さんには、JA説明会で既にお話しています。皆さーん、大丈夫ですか~?)
4)から考えられる工夫
●初めからしっかりと育った苗(大苗)を植える。
●苗に行かないよう、おとり(?)になるやわらかいエサで誘引する。
⇒野菜くずや段ボールなどを隅に置いておくと、ジャンボタニシはそちらへ食いつきます!


【共存共栄の道もある】
ある程度苗が生長して固くなると、ジャンボタニシは苗には目もくれず、周囲に生えているやわらかい草ばかりを食べるようになります。こうなると、ジャンボタニシは恰好の除草隊に!上手につきあえば、農家のよき相棒となってくれるんです。ここから、ジャンボタニシのことを「稲守貝」と呼ぶ地域もあるそうです。実際当会には、ジャンボタニシをうまく利用して、一度もチェーン除草をしたことがない生産者さんもいます。
そもそも、なぜチェーン除草をしなくてはいけないのでしょう?
苗が育ちやすくなるように、手助けしてあげる必要があるからなんですね。言い換えれば、その必要がなければ、チェーン除草はしなくてもいいんです。コナギやヒエが生えても、稲の方に力があると判断し、除草しない人もいます。チェーン除草は必ずしなくてはいけないわけではないんですね。
かといって、「自然栽培だから自然のまま、そのままに…」というのも自然栽培的ではありません。それが「放置」となっていないかを見定める必要があります。木村さんはかつて、「“子どもは自然に育つ” からといって、生まれたての赤ちゃんを放っておく親はいないでしょう?」と仰っています。
「自然という無為」と「栽培という有為」の対峙関係をどのようにバランスするかが、木村式自然栽培のキモとなります。(※1)
木村さんが伝えているノウハウや当会が登録生産者さんに配布している手引きは、その通りにしなくてはいけない農法≒規律なのではなく、あくまでもガイドラインだということをいつも念頭において、田んぼや苗、そして周辺のさまざまな環境と対話をしてみてください(^^)
※1 このことから、私たちは「自然農法」ではなく「自然栽培」と呼んでいます。
※2 「除草してくれるなら!」と、ジャンボタニシを持ち込むのは絶対NGです!
生態系を壊し、近隣の田んぼに迷惑がかかりますので、やめてください。
ジャンボタニシは環境省の要注意外来生物リストにも入っています。