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自然栽培の水田における生物調査結果

「自然栽培」とは、太陽、空気、水、土壌等、自然界の生態系が持つ物理的・化学的・生物的な相互の仕組みと働きを活かす栽培方法です。生態系に影響を与える夏の土用干しもしません。

 

自然栽培に取り組む水田の動物相を調査し、その構成種を明らかにすると伴に、自然栽培におけるイネの生育のメカニズムを考察しました。今回は平成29年度に行った生きもの調査の結果をまとめています。


1.対象水田

 調査は自然栽培の岡山県南、県北の7年、5・3年、1年目の水田及びコントロールとして慣行栽培の水田で実施しました。

2.対象種

両生類、魚類、甲殻類、クモ類、昆虫類、貝類等

 

3.調査日

2017年6月26日、7月4日、8月5日、8月12日、9月18日

 

4.調査方法

目合1mmの手網を用いて各々の水田で約30分程度生物を採集しました。現地で種名が確認できる種以外は固定して持ち帰り、実態顕微鏡や顕微鏡を用いて同定を行いました。

5.調査結果

①確認種の地域別比較

岡山県は、中国山地と瀬戸内海に挟まれ、南部の平野地帯は典型的な瀬戸内海式気候。一方、北部の中国山地沿いは日本海側気候に属し豪雪地帯に指定されています。

 

調査で確認された水生動物(注:水中で確認された種とし、例えばトンボ目の幼虫はこちらに含める)は50種、陸上動物(注:陸上で確認された種とし、例えばトンボの成虫はこちらに含める)は22種でした。種類数を県南・県北地域に分けて、表-1に示します。

表-1 確認された県南と県北の各水田の種類数一覧表
表-1 確認された県南と県北の各水田の種類数一覧表

県北の水田は、県南の水田と比較すると種類数は多いものでした。県北の水田は周囲に山が広がり、ため池も存在し、それらとの連続性があり、水質も良好であることから、種類数が非常に多かったものと考えられます。県南の水田は周囲が民家で自然が乏しく、水質も良好ではないことから、貝類等比較的水質汚濁に強い種を中心に確認されました。

 

②慣行栽培との比較

慣行の水田は水生動物のみ夏季に調査しました。Bの水田と隣接するEの農薬、肥料、除草剤を使用した慣行栽培の水田を比較すると、その種類数の違いには著しいものがありました。慣行栽培のE水田で確認された2種は自然栽培の水田Bからの水が漏れ出た所で確認されたものであり、それを除くとE水田では水生動物は確認されませんでした。

表-2 確認された自然栽培と慣行栽培の種類数
表-2 確認された自然栽培と慣行栽培の種類数

③経年変化

県南の自然栽培歴7年と1年の比較をすると、構成種に大きな違いはありませんでした。しかし、7年目の水田は個体数が多く、特にコオイムシ、コガムシ、マメガムシが非常に多く確認されました。

表-3 確認された自然栽培での年数の違いによる確認種類数
表-3 確認された自然栽培での年数の違いによる確認種類数

④自然栽培のシステム

自然栽培では、農薬、肥料、除草剤は一切使いません。イネの害虫としてはハネナガイナゴ、ヒメウンカ、イチモンジセセリ、ツマグロヨコバイ、ヒメハリカメムシ、アオバアリガタハネカクシ等が確認されました。

 

しかし、ハネナガイナゴ以外は調査時にごくわずかな数が確認されたのみです。また、ハネナガイナゴは若干いましたが、イネよりも周辺の畦畔に生育しているイネ科植物に多くいました。(⇒自然栽培では、畔の草はできるだけ刈らないようにしています。=バンカープランツとして利用)

 

これらを直接または間接的に食べる天敵生物としては、コシアカツバメ、ヌマガエル等無尾目、ヤサガタアシナガグモ等クモ目、シオカラトンボ等トンボ目、ホルバートケシカタビロアメンボが確認されました。つまり、農薬を使わなくても天敵生物が害虫を食べてコントロールし、十分農薬の役目を果たしていると考えられます

※ここでいう「害虫」とは、イネの生長を阻害している虫ということですが、自然栽培では、そうした働きにもなんらかの意味・理由があるのでは?、害虫VS天敵という構図にも、何か違う捉え方ができるのでは?という考え方を提案しています。このような生態学の観点からの研究が待たれます。

また、害虫、天敵以外にも多くの種が確認されました。これらはすべて死骸となり、微生物に分解されイネに栄養分として吸収されます。ところが、農薬を使用するとこれらの生物は死滅し、さらには分解者である微生物までが死滅します。

 

慣行栽培では、雑草はイネの栄養を奪うとして除草剤が使われていますが、自然栽培では、田植え後3回程度チェーン除草機で除草を行ってイネの根に十分な酸素を送り、イネの発根促進を促すことで、ほかの草の繁茂を停滞させています。自然栽培の水田にはコナギ等の水田雑草が若干生育していましたが、これらよりも先にイネの発根が促進されていれば、イネの生育は十分で雑草は問題とはなっていません。

 


自然栽培の水田では、畦畔を含む水田の周辺環境にイネ以外の植物をできるだけ排除しないことで多くの生きものの住処を提供しています。それにより多くの生きものが棲んでいます。また、微生物を含む生きものたちの物質循環を活用しているため、施肥の必要もありません。施肥を行わないことで、肥料過多によって引き起こす病害虫の発生も抑えています。

 

⑤希少種の保護

環境省レッドデータブックや岡山県レッドデータブックに記載されている希少となった種は、水田やその周辺の水路を生息場とする種を多く含んでいます。これらの減少要因としては、農薬等の使用、営農方法の変更、乾田化、水路の改修等と考えられています。今回の調査で確認された種名、希少性のランク、確認地点を表-4に示します。

表-4 希少種のランク及び確認地点一覧表
表-4 希少種のランク及び確認地点一覧表

自然栽培の水田では希少種が5種確認されましたが、農薬、除草剤、肥料を用いて栽培する慣行栽培では確認されませんでした。

別表   確認された動物一覧表

 

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別表 調査結果一覧表

 

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